エアースタンプハンマ鍛造の高い技術力という大智鍛造所の最大の強み。これを維持するため、金型設計と連携した技術者の育成方法をご紹介します。

お客様には”プロ”として接し、仕事には”職人”として臨む

バンバーン、バン、バン。バンバーン、バン、バン。バンバーン・・・。
同じリズムで同じ音が鳴れば、ずっと同じものができる。
エアースタンプハンマはいわば楽器です。
だから楽器を演奏するように、一定のリズムで叩き続けるのが上手くなるポイントですね。
右足でペダルを踏んで、手に持った火箸で材料を移動させて、ドラムの演奏って感じでしょうか。

でも、これが結構難しい・・・。
人がやっているのを見ると簡単そうに見えるんですが、実際にやってみると、一踏みもできない。ハンマが自分のイメージしているようには動いてくれないからです。
足でペダルを踏んで、同時にハンマが動くわけではありません。
実際には上型が下りるまでにタイムラグがあって、その間合いを読んで足を動かさなければならない。
しかも、機械によって、この間合いが少し違ったりするんです。

ペダルを踏む強さなんて感覚ですから、その感覚というか、ニュアンスを伝えるのが難しい。
だからほとんど音。型と型、面と面がぶつかる音で判断しなくてはならない所が、職人技と言われるゆえんでしょうか。

でも、言い換えれば、そこが最高に魅力です!
毎日が勉強で、奥が深いから、「もっとええもんできるんとちゃうか?」、「もっときれいなもんできるんとちゃうか?」、と、思わず追求してしまう、たまらなくやりがいがある仕事だと思います。

しかし、現実には、エアースタンプハンマは若い人が自ら好んでする仕事ではありません。また、仮にやりたいという人がいても、職人的な要素が入り込んでいるので、なかなか育てるのが難しい。
実際、業界では、人材不足から機械操作で同じものを大量生産できる、プレス鍛造に移行する会社が増えています。

でも、大智鍛造所は、この時代、あえて難しいとされるエアースタンプハンマで勝負しています。

エアースタンプハンマとプレスの違いは、簡単に言うと、コストと工数です。
プレス鍛造は一定の圧力で加圧するので、同じ品質のものを大量に生産することに向いていますが、、曲げたり広げたり、それぞれに金型と機械設備が必要となりかなりの初期投資がかかります。
それに対し、エアースタンプハンマは、一つの金型で全ての加工ができるため、大幅にコストと工数を削減することが可能ですが、人によって品質と生産性が左右されてしまう。

そのような中で、大智鍛造所は、競争力のあるエアースタンプハンマを選択し、若い熟練工の育成にも力を入れてるからこそ、存在価値があるのです。

偶然人材に恵まれたわけではありません。
当然、どうやったら若い熟練工が育つかを考えに考えて、早い段階から社内改革を行った結果です。

自分が入社して、ベテランの職人さんに教えてもらいながらもその難しさに苦労して、その記憶がずっと頭に残っていたために、次に入ってくる人にどうやって伝えていこうかということを常に考えながら作業をしてきました。

そしていよいよ育成、にあたって、

  1. まずは面白さを伝えること
  2. 基準を作ること

と、ポイントを2つに絞って取り掛かりました。

興味を持てないと、しんどさに負けて辞めてしまう。また、確かに「見て盗め」というレベルの仕事ではあるけれど、そんなことを言っててもはじまらないので、「今のいいよ」、とか、「それはあかんね」、とか、求める答えを出せる基準を作ろうと考えました。

取り組みとして始めたのが「金型診断書」、一言で言えば、「感覚を共有する紙」です。
金型は500種類以上ありますが、どれでも打てるようにならなければいけない。そのために、自分が打った金型の、「ここが打ちにくかった」とか、「ここがくっつき易かった」、とかを記入するものを作りました。

同じ型を次に使う場合、金型と一緒にこの診断書も付いてきます。
そうすると、「あー、前はここが打ちにくかったんか」、という風に思いながら打つことができる。
それで、意外に打ち易かった、とか、自分と人との感覚の違いを知ることになるのです。
これによって、どんどん感覚の答え合わせをしていける。
そうしながら、誰が叩いても一定の鍛造品ができるように、大智鍛造所の技術として残していく努力をしています。
その他、スタッフのスキルチェックなども定期的に行い、技術力の向上に努めています。

打ち方によっては、同じ金型でも1万個と3万個くらいの寿命の差が出てしまうのがハンマーの仕事。お客様のコストを抑えるためにも、より効率的でキレイな打ち方を追求しなければならないのです。

とはいえ、それだけで技術力を高めることができた訳ではありません。
ここまでできたのは、仲間を信頼することができたからです。
技術グループ、品管グループ、全ての部署が、それぞれ責任を持って仕事をすすめてくれる、と信じることができたから、鍛造技術の向上、育成に集中することができました。
普通は、製造・生産なんかの仕事だと特に、悪い事は別部署のせいにしたりするわけですよ。

会議


でも、自分達のために、少しでも打ちやすい金型を作ろうとしてくれる設計や、練習生が叩いた鍛造品を後工程できっちり処理をしてくれる品質管理がいてくれたから、「そういった気持ちを活かしきらないと申し訳ない」、と強く思えたことで、より集中して技術力を向上することができました。
そういう信頼関係があるからこそ、大智鍛造所は様々な改革ができるし、新しい課題に挑戦できると思います。

確かに、職人としての技は大智鍛造所のウリです。
でも、求めたいのは職人ではなくて”プロ”。
会社として「誰だれさんが作った品物」、とか、「あの人の作品だから欲しい」、というのはあってはならないと思っています。
常にお客様の方を向いて、自分達が持っている最大限の力を出す。
お客様には”プロ”であり、作業に入ったら”職人”というのが目指すイメージです。

5年先、10年先も、「安心できるから大智さんにやってもらえ」、と言われる会社であり続けたい、個人的には、お客様の声や、後輩からの声も素直に聞いて、しっかり判断できるような、”正直な会社”でいたい、と思っています。
どれだけすごい機械を入れたとしても、使うのは人間なので、作り手の心意気が込められるような会社でいたい。
そうすることが、お客様の信頼を得ることに繋がるのだと信じています。